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遠野ものがたり

 

遠野(とおの)ものがたり

遠野(とおの)ものがたり

 

評価:★★☆☆☆

評価の補足

星2つとしていますが、これは『遠野物語』という作品そのものではなく、本書に対する評価であることを最初に断っておきます。

本書は「原作を現代語訳にし、挿絵を挟むことで『遠野物語』に詳しくない大人でも楽しめるような絵本を作りたい」という意図で制作されています。収録されている内容自体はどれも印象深いです。ただ、7話という収録数に比して割高感がありますし、果たしてハードカバーで出版する必要があったのかどうか懐疑的です。大人を読者対象に含めるなら、+αとして各話ごとの解説などがあると面白かったのではと個人的には思います。

恐らく、本書の他にも平易な言葉で訳された値ごろの『遠野物語』があるだろうことを考えると、人におすすめするのは厳しく感じます。

 

手に取ったきっかけ

歴史街道のバックナンバーを注文しようと、PHP研究所のオンラインショップを利用しました。ところが、1500円未満は送料がかかるというので、色々と探した結果、とあるきっかけで本書の同時購入を決めたのです。

 

目次の中にあった、「マヨイガ」というタイトルがきっかけのそれです。このとき、春アニメが始まったばかりで、私は『迷家-マヨイガ-』*1を視聴していました。何か関連があるのではないかと、私はあっさり飛びつきました。それに、そろそろ小説を読むのに疲れて、さらっと読める箸休め的なお話が欲しいという私の要望にも本書はマッチしていました。

 

ちなみに『遠野物語』とは、民俗学者柳田國男氏が明治43年(1910年)に発表した岩手県遠野地方の逸話、伝承を編纂した説話集です。

 

『迷家-マヨイガ-』との関連性

アニメの放送途中ですので現時点の所感ですが、「マヨイガ」の「”人が生活している気配があるのに誰の姿も見当たらない家”に迷い込む」という本筋から着想を得たという程度で、物語の鍵を握るようなヒントは隠れていないように思いました。『遠野物語』の説話のそれぞれが短いので、ヒントの隠れようもないのですが。

 

ぞっとするくらい陰湿

「ザシキワラシ」「オシラサマ」。この2話は、私の岩手に対する印象を確実に悪いほうへ変えてしまいました。それほどにアクが強く、迂闊に『遠野物語』に手を出したことを後悔しています。

 

ザシキワラシ(以下、座敷童子)はメジャーな神様(または精霊)として知られているでしょう。彼らは金持ちの旧家の奥座敷にひっそりと住んでいます。彼らが出て行くと、その家は間もなく没落してしまう。

 

村一番の長者の男は先祖代々から稲荷信仰をしている熱心な信者で、神の遣いである狐を大事にしています。男は自宅近くの稲荷の祠に油揚げをお供えすることを日課にしていますが、そのおかげで狐は人馴れして警戒心をなくし、何をされてもなすがままです。周囲は「神の遣いがこれではご利益もあるまい」と、男を陰で嘲笑の的にします。その様子を見た座敷童子は、「見損なった。わたしたちがいるのに、狐のご機嫌取りとはとんだ欲深だ」と出て行ってしまいます。

 

男が怠惰な生活を送っているわけでもなし、別に何を信仰しようが自由じゃないかと私は思うのですが、怖いのはそのあとです。早い話が、下男が採ってきたキノコ汁を食い、男を含むその家の者たち20数人が中毒死してしまうのです。男の縁者たちは家財や食料の一切合財を運び出してしまい、長者屋敷は荒地になってしまった、という結末。

 

座敷童子が出て行ってしまうことで、プラスがゼロになるどころか、マイナスまで落ちる、ということは知っていましたが、この結末は想像以上でした。童話によくある教訓話の類でもなさそうです。男は悪行を働いておらず、反面教師にするような存在とは思えません。ただ「座敷童子を信仰していなかった」だけ。その仕打ちが一家全滅であるというところに、怨念めいたものを感じるのです。

 

結局は人だから

結局、『遠野物語』の説話は人によって生まれ、人によって言い伝えられているのです。ですから、私は座敷童子などの神々や不思議な力ではなく、これらが生まれた岩手・遠野地方の風土や人柄こそが、想像すればするほどに怖ろしい。童話のような一種のエンターテインメントとは違い、創作物とは一線を画したところにあるので、きれいに終わることを目的にされてはいない。勧善懲悪や美談といったオブラートに包んでいないわけですから、『遠野物語』から受け取った印象そのものがその土地の印象なのです。

 

見てはいけないものを見てしまった気分です。

これから手に取ることを考えている方には、どうぞお気をつけてと言いたい。

 

<参考>

遠野物語 - Wikipedia

 

*1:物語導入:人生やり直しツアーに参加した30人の男女。現世のしがらみにとらわれないユートピアと囁かれる幻の村・納鳴村を目指す。彼らが行き着いたのは、人の生活の匂いが残る無人の集落だった。 公式HPから要約

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