読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

インスタント書感

「1記事3分間(最長1800字)で読める」をコンセプトに、主に読書感想を垂れ流すブログ

蜘蛛の糸・地獄変

 

改編 蜘蛛の糸・地獄変 (角川文庫)

改編 蜘蛛の糸・地獄変 (角川文庫)

 

 評価:★★★★☆

 

手に取ったきっかけ

なんとなく芥川龍之介が読みたくなり。新潮文庫の「羅生門・鼻」は学生のときに読んだ……ような気がするのですが、手元にないので定かではありません。

 

単語の意味が分からない

小説の感想とは別になってしまいますが、私は「白い巨塔」を読み始めてから、分からない単語には付箋を貼って調べるようにしています。ところが、今回は分からない単語があまりに多過ぎるので、付箋を貼るのは諦め、一通り読んでから辞書を引きつつ再度物語を追いました。

 

「毛利先生」、「蜘蛛の糸」、「犬と笛」はよいのです。後者2編は特に児童文学だから難しい言葉も使われておらず分かりやすい。しかし、「地獄変」なんて一度は読んだことがあるはずなのに、あのときの自分は物語の上辺を追うだけで、きっと舞台が平安時代であることすら認識していなかったように思う。我ながら恥ずかしい。

 

分からない単語というのは、たとえば、以下の一文。 

しかもそのあとからは楚をふり上げた若殿様が「柑子盗人め、待て。待て」とおっしゃりながら、追いかけていらっしゃるのではございませんか。(地獄変

この 「楚」(すわえ)、大辞林 第三版によれば、①細く、まっすぐな若枝。②刑罰に用いる、むち。という意味だそうで、調べないと何を振り上げているのだか皆目見当がつきません。

 

もしくは、文庫によって注釈の多さに違いがあるのでしょうか。本の薄さに反して、今回はさすがに調べ疲れました。

 

袈裟と盛遠

本書の最初に収録されている短編小説です。盛遠と袈裟の独白による構成は、「藪の中」を想起させます。短いですし、話自体もとてもシンプルで、初めて芥川を手に取る人も気負わずに読めるという点で、とてもいいと思います。

 

羅生門」や「地獄変」などに比べれば、あまり目立たない作品かもしれませんが、私はこの「袈裟と盛遠」が本書では一番心に残っています。

 

独りよがりな人間が多々、登場する芥川作品の中で、この話も例外ではありません。関係を持った男女が、少なからず相手を愛しているにもかかわらず、その心が一切交錯しているように見えない。それが、独白という心中表現の効果なのか、よりはっきりと感じられます。この二人、結局は自分のことしか考えていないのです。

 

しかしながら、独善的と一口に言ってもその性質は異なっています。男(盛遠)は過去を思い返して欲望と失望をぐずぐずと相手に転嫁する一方、自己嫌悪を抱きながらも死を覚悟した女(袈裟)はどこかさっぱりした諦念があります。

 

源平盛衰記」によれば、盛遠の出家は袈裟を殺したことが原因になっているとされています。*1 出家は19歳のときだそうですから、道を踏み外した青年の煩悶を手の届かない紙の上から眺めるというのは、なんともむず痒いものです。

 

<参考>

文覚 - Wikipedia

 

*1:Wikipedia 文覚 2.人物

広告を非表示にする